判例: 遷延性意識障害
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当初「無責」と主張した被告に過失7割を認めさせ、原告の過失分は人身傷害保険で全額補填
損保の主張を却下し、遷延性の21歳女性に余命期間全ての在宅常時介護料を認めたケース
■遷延性意識障害(判例013) 裁判所認定額 約2億4,100万円 ■画期的判例 遷延性意識障害 関東地方 2007年 確定(裁判所明記せず) 被害者データ
21歳・女性
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認められた主な損害費目
人身傷害による補充
(損害賠償額の総額) |
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詳細
被告は事故直後から「この事故に自分の責任はなく、被害者に100%の責任がある」と無責を主張。被害者の両親はその理不尽な言い分に到底納得することができませんでしたが、保険会社もそうした思いを無視し続けていました。困惑した両親は、地元の弁護士に相談しましたが、その弁護士も被害者の過失は5割を下らないという方針のもとで訴訟を起こそうとしたため、両親は悩んだ末にその弁護士を解任し、被害者の会を通じて当ネットワークに相談に来られたのです。たしかに、交通事故としては特異な態様の事案でしたが、我々はあくまでも被害者に過失はなかったという前提で、まずは自賠責への被害者請求をアドバイスしたところ、自賠責保険金は減額なしで全額支払われました。
裁判では捜査資料及び被告尋問を通して、坂道であるにもかかわらず無理な姿勢でのブレーキ解除を指示した被告に全面的な責任があることを緻密に立証。その結果、判決では被告に7割の過失があることを認め、さらに、保険会社が支払いを無視し続けたことも非難の対象になりました。
また被告側は、逸失利益は生活費控除を行うべきだと主張。遷延性意識障害者の余命年数についても、他の多くの裁判と同様、平均余命までを認めず、生存可能期間を限定して損害を算定するか、定期金で賠償すべきだと反論してきました。しかし我々は、原告の状態、介護する家族の状況や証言、主治医の意見を通して、自宅で手厚く介護すれば余命を全うできることを緻密に主張。その結果、裁判所は、事故後4年以上を経て原告の病状は安定した状態にあること、主治医も現在の原告の在宅介護の管理状態を前提とすれば、余命を全うする可能性も十分にあると供述していること、死因の過半数を占める呼吸器疾患(肺炎)を防ぐことで生命予後を改善できる見解があることなどを認め、同年齢女性の平均賃金を基礎とした逸失利益が、平均余命まですべて認められました。
なお、症状固定後に施術した脊髄後索電気刺激療法(DCS装置埋込術)の費用(約500万円)についての議論もありましたが、医師の医学的判断を経て行われ、四肢の痙縮に一定の効果があったことから、この経費も認められ、結果的に表のとおりの高額な損害額を認めさせることができました。
介護パターン
母親が67歳までの17年間 | (職業日中15000円+家族夜間3000円)×240日 + 家族8000円×125日 |
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母親が67歳以上48年間 | (職業日中15000円+職業夜間4000円)×365日 |
計 | 約1億1400万円を認める。 |
弁護士コメント
本件訴訟は、被害者の両親が被告や損保会社の理不尽な「無責」主張に屈せず、当ネットにたどり着くまで粘り強く信念を貫かれたことから始まった。しかし、自賠責で無責の主張が覆された後もなお、被告と損保会社は遷延性の被害者に対し、損害を算定する上での余命年数を短縮するよう迫ってきた。ちなみに、最近では被害者の余命年数を短縮するような判例は皆無であるが、こうした人権無視ともいえる損保の主張は、在宅で24時間手厚い介護を続ける被害者の両親をどれほど苦しめたことであろう。我々はその思いを汲んで、懸命に立証活動に取り組み、結果的に被告側の反論は全て退けられ、高額判決につながった。
また、人身傷害保険の請求においては、当ネットワークが開拓した、被害者に最も有利な方法である裁判所基準の差額説を利用。その結果、原告の父親が加入する自動車保険の人身傷害保険により、被害者に最も有利である裁判所認定損害額の原告過失30%(7,300円)が補填され、総額で2億4,100万円を獲得することができた。
加害者自らが、遷延性意識障害という重篤な障害を負わせているにも拘らず、訴訟において「余命が短い=長生きしない(早く死ぬ)」という被告主張は言語道断である。この非人道的な反論を粉砕できたことは、大きな意義がある。