判例: 高次脳機能障害
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保険会社側は9級を主張も、医証や会社上司の陳述書などに基づき、5級の高次脳機能障害と認めた例
5級の高次脳機能障害について通勤のために親族が付き添っていること等を考慮し、日額3,000円の介護料を認めた。
■高次脳機能障害(判例027) 裁判所認定額 約1億400万円 ■画期的判例 高次脳機能障害 被害者データ
30歳・男性
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認められた主な損害費目
※1審では、被害者の過失は55%とされ、既払分約1,900万円のほかに約3,500万円(弁護士費用を含む)の支払を命じた。 ※控訴審では、被害者の過失が20%であることを前提に、既払分約1,900万円のほか約8,500万円を支払うことで和解した(合計約1億400万円)。 |
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詳細
事故前と同じ会社に就労を継続していることから、保険会社側は9級を主張したが、医証や会社の上司の陳述書などに基づき、5級の高次脳機能障害と認めた例。
5級の高次脳機能障害について通勤のために親族が付き添っていること等を考慮し、
日額3,000円の介護料を認めた。
【裁判所】
(1審)札幌地裁 <既払金約1,900万円のほかに約3,500万円円を払え>
(控訴審)札幌高裁~和解<既払金約1,900万円のほかに和解金8500万を払う>
【事案】
深夜、路外(ガソリンスタンド)から、国道の反対車線に右折進入しようとした被害車両に、時速約130キロの加害車両が衝突した事故です。被害者は、高次脳機能障害となり、物忘れがひどくなり、作業を覚えられず、会社内で些細なことで喧嘩をするなどのトラブルを起こすようになり、事故前と異なる単純作業の労働に配置転換されました。
裁判で、被害者側は、
<1>5級の高次脳機能障害である(労働能力喪失率79%)、
<2>介護料が日額3,000円程度かかる、
<3>被害者には過失がない、という主張をしました。
他方、保険会社は、
<1>実際に事故前と同じ会社に継続して勤務しているので、後遺症は9級程度(労働能力喪失率35%)である、
<2>就労している以上、介護料は必要がない、
<3>被害者の過失が大きい(被害者が75%)などの主張をしました。
その結果・・・
地裁判決では、<1>及び<2>の点については、保険会社の主張は全て否定され、平均余命である5級を前提に逸失利益(約6,400万円)及び介護料(約1,900万円)が算定されました。 5級の高次脳機能障害は、自賠法施行令でも介護を要しないことが前提とされており、介護料を否定する裁判例もあります。しかし、高次脳機能障害の場合には、他人の援助なく、社会生活を営むことは困難であり、この点を、家族の陳述書のほか、医師や勤務先会社の協力を得て、丁寧に立証することで、日額3,000円の介護料が認められました。 ただし、1審判決は過失割合について、被害者側に55%の過失があるとの判断をしたので、この点が不服であり、控訴しました。
控訴審では、加害車両の速度や事故現場からの相互の視認性などを緻密に立証し、被害者側の過失を20%とする和解が成立しました。 (北海道・札幌高裁)