遷延性1級男子高校生について過失大きいながらも総額2億8,000万円超の賠償金を獲得した和解事例
加害者側より将来的には施設介護へ移行する可能性がある等と在宅介護を前提とする当方主張が争われたが、在宅介護を前提とした判断がなされた事例
総合支援法による既給付分の公的給付は損害填補性を持たず賠償額から控除されないことが明示された事例
■後遺障害等級:1級 確定年:2017年 和解
■名古屋地裁管内
被害者データ
16歳
・男性
(高校生)
事故時16歳 固定時17歳 男性 高校生
自転車で丁字交差点を進行中に加害車両と出合頭衝突したもの(こちらの一時停止等が問題となった)
遷延性意識障害1級
認められた主な損害費目
逸失利益 |
約9,100万円 |
---|---|
将来介護料 |
約1億2,800万円 |
将来介護関係費(雑費・車両等) |
約2,500万円 |
住宅改造費用 |
約2,000万円 |
傷害慰謝料 |
約350万円 |
後遺障害慰謝料 |
約2,800万円 |
その他 |
約450万円 |
損害合計 |
約3億円 |
過失相殺50%(※2) |
-約1億5,000万円 |
任意保険 |
-約1,000万円 |
障害年金 |
-約200万円 |
近親者固有慰謝料 |
約300万円 |
調整金(※1) |
約3,400万円 |
総額 |
約1億4,300万円 |
※1遅延損害金、弁護士費用等を含む
※2上記賠償に加えて、訴訟に先立って人身傷害保険金を取得する手続きを当方で進め
約1億4,000万円を別途獲得した。そのため、最終的には、過失相殺によって自己負担となる部分が約1,000万円に抑えられ、2億8,000万円もの賠償金を得ることができた。
詳細
加害者側の主張
① 日額3万円を超える職業介護を利用するとの当方主張に対して、加害者側は、本人の状態からすれば将来的には施設介護になる可能性があり、また、自宅で介護をするにしても、家族介護の習熟度が進めば家族らの介護負担は軽減する等といった主張を行い、介護費等を争った。
② 総合支援法による既に給付が行われた介護関係の給付について、賠償額より既払い金・損害填補として控除すべきであると主張。
裁判所の判断
① 当方からは、具体的な障害の内容、現在の介護状況等を詳細に説明を行った上で、被告側の主張である在宅介護の継続性を否定するかのような議論に対しては、被害者の兄弟を含めて、最大限在宅での生活が維持できるように協力していくつもりだという意向をしっかりと裁判所にも伝え、本人にも従前の地域で生活を送りたいという意向があり、現に、母親をはじめとする家族らも介護に参加している状況等を詳しく主張した。その結果、賠償の前提としては、母親が67歳以降になっても在宅での介護が継続されるものとして、介護料の算定が行われている。
② また、公的給付の賠償金からの控除に関しては、総合支援法の法律上の給付の趣旨や性質論を取り上げ、過去の裁判例なども指摘して、控除されないことが認められた。
当事務所のコメント
① 重度の高次脳機能障害や遷延性意識障害の方の場合、特に若年の場合、両親や配偶者が家族の中で主たる介護者となりますが、本件のように介護をするご家族が高齢化(訴訟一般では67歳が境界線)してからも在宅での介護が続けられるのか、相当なのかといった反論がなされることはよくあります。しかしながら、当事務所では、家族だけではなく、職業介護人を適正に用いることで、十分に在宅介護を安定して継続できるというのが、多くの事例を通して、把握できております。この点をしっかりと議論することで、将来的な介護費用を十分に確保することができます。
事故前と同じように、変わらず家族でご自宅で生活を続けたいというお気持ちは、当たり前のことであり、それを実現できるように損害賠償というものが存在します。当事務所では、それぞれのご家族の介護体制の選択を重視して、これまでの多くの方の事件を解決してきた経験と知見を活かして、賠償面でも大きくサポートさせて頂いております。
なお、将来介護費用の日額相当額についても、まだまだ裁判所側の判断や基準額には、介護実態との乖離があります。その差をできる限り埋められるように、これからも尽力をしてまいります。
② 今回のケースでは、一時停止義務違反の可能性も検討されており、過失が相当程度になることも事前に想定しておりました。そこで、ご家族の訴訟中の資金面の確保も含めて、事前に1億4,000万円以上の人身傷害保険金を獲得しており、これによって過失分についても大部分を填補することができました。
このように保険の有無や適否、どのタイミングで回収を行うかという点についても、十分な知見が必要になるため、交通事故訴訟を専門的に行ってきた当事務所でも、しっかりとサポートを行っています。