緻密な立証で自宅介護を認めさせ、高額な住宅改造費や介護料を獲得
「余命の短縮」「生活費控除」等、相手側のマイナス主張はすべて排除
■後遺障害等級:1級 確定年:2009年
■東京地裁管内 (和解)
被害者データ
25歳
・女性
(会社員)
原告が助手席に同乗中、前方不注視の大型貨物車が追突
遷延性意識障害 1級
(東京地裁管内)
認められた主な損害費目
将来介護料 |
約1億1,700万円 |
---|---|
逸失利益 |
約5,900万円 |
住宅改造費 |
約1,800万円 |
介護諸費用 |
約1,900万円 |
傷害慰謝料 |
約400万円 |
後遺障害慰謝料 |
約3,500万円 |
近親者慰謝料 |
約800万円 |
その他 |
約1,800万円 |
損害額 |
約2億7,800万円 |
調整金※ |
約2,100万円 |
総計 |
約2億9,900万円 |
既払控除(任意) |
-約400万円 |
既払控除(自賠責) |
-約4,000万円 |
最終金額 |
約2億5,500万円 |
(※弁護士費用及び遅延損害金相当額)
詳細
本件には、3つの争点がありました。
1つ目は、「自宅介護が可能かどうか」という問題です。この点についてはどの事案も同様ですが、我々はまず、両親と協議しながら被害者を受け入れるための条件を整え、その上で、入院先の主治医から「自宅介護可能」という承諾を得ました。さらに裁判では自宅介護におけるメリットをしっかりと主張し、結果的に十分な住宅改造費や高額な介護料が認められました。
2つ目の争点は、遷延性意識障害者の「余命」についてです。加害者側は例にもれず、「余命を短縮すべきである」という主張を展開してきましたが、これについてはすでに判例で「医学的にみて、確たる証明はなされていない」と明示されており、和解では平均余命が認められました。
3つ目は、「遷延性意識障害者は寝たきりで生活費がかからないのだから、生活費控除をすべきではないか」という議論です。たしかに、こうした主張を認めているケースもごくまれにありますが、障害者と言えど、外出の際には洋服も必要で、情操教育のためには音楽を聴いたり、読書をしたり、健常者と同じようにテレビも見ます。実際に、こうした刺激を与えることで感情表現が豊かになり、意思表示が可能になることもあるのです。また、我々は、ノーマライゼーションという観点からも、控除すべきではないと強く主張したところ、相手側の主張は完全に排除されました。 (東京地裁管内 和解)
増額のポイント
自宅介護のメリットと介護プランを緻密に立証した結果、1800万円という極めて高額な住宅改造費が、さらに、介護雑費は日額1500円(平均余命まで61年間=約1000万円)、職業介護料も日額2万円が認められたことで、介護費用のみで合計1億7000円という高額で和解を成立させることができた。
また、本件被害者は助手席に同乗中、不可抗力の事故で人生を奪われ、介護にあたる両親の苦しみも計り知れないものだった。我々はそうした辛さもしっかりと主張した結果、本人分3500万円という高額な慰謝料につながった。
ご家族は日々大変辛い介護の日々を送っておられるが、我々との出会いにより、自宅介護のための十分な設備と介護費用を確保することができ、その点においてはご安堵いただいた事例である。
加害者自らが、遷延性意識障害という重篤な障害を負わせているにも拘らず、訴訟において「余命が短い=長生きしない(早く死ぬ)」という被告主張は言語道断である。この非人道的な反論を粉砕できたことは、大きな意義がある。