脊柱変形11級男性につき労働能力喪失が争われるも10年間20%、その後18年間10%の喪失率が認められた事例
後遺障害が脊柱変形11級のみであり、営業業務主体、現実の減収がないという被害者について労働能力喪失がないとして争われた事案
■後遺障害等級:11級 確定年:2013年和解
■横浜地方裁判所管内
被害者データ
38歳
・男性
(会社員)
受傷時38歳・症状固定時39歳・男性(会社員)
被害自転車前部に、路外からバックで道路上に出てきた加害自動車が衝突した
脊柱変形11級
認められた主な損害費目
逸失利益 |
約1,020万円 |
---|---|
傷害慰謝料 |
約170万円 |
後遺障害慰謝料 |
約420万円 |
その他 |
約70万円 |
損害総額 |
約1,680万円 |
過失相殺(20%) |
-約330万円 |
損害填補(任意) |
-約60万円 |
損害填補(自賠責) |
-約420万円 |
調整金(※1) |
約190万円 |
和解金額 |
約1,060万円 |
※1遅延損害金、弁護士費用等を含む
※2訴外の自賠責保険金約420万円を合わせた総獲得金額は約1,480万円となる。
詳細
加害者の主張
①被害者に残存した障害は脊柱変形のみであり運動機能への障害を伴っていないこと、仕事は営業業務中心であり影響が小さいと考えられること、現実に減収も生じていないこと等から、11級相当の労働能力喪失率20 %を認めるのは妥当ではなく、5~14%程度が妥当であると主張。
②労働能力喪失期間についても、神経症状が出ている程度であり徐々に緩和していくと考えられるから10年に留めるべきであると主張。
裁判所の判断
①当方からは、現実の減収がないとの点に対して、本来であれば昇給が予定されていたがこれが事故によって見送られていること、営業職とは言っても美容機器のセールスのために10kg弱の機材を運搬することもしばしばあり、肉体的労働の側面もあること等を詳細な聴取に基づいて主張した。その結果、裁判所和解案では、症状固定から10年間は喪失率を20%とし、以後18年間は10%として労働能力喪失率を認めた。
喪失期間についても、当方主張のとおり28年間(被害者が67歳になるまで)が認められた。
②自賠責保険金約420万円とあわせて、約1,480万円での解決となった。
当事務所のコメント
脊柱変形は、受傷部位のみをみれば相当重症のように思われますが、賠償の場面では、労働能力に如何に影響を与えているのかという点が最大の焦点となるため、単純に変形があるというだけでは、仕事への影響は小さい、あるいはまったくないのではないかと争われやすい後遺障害と言えます。裁判所の認定でも、等級通りの喪失率、喪失期間を認定しないという例も少なくありません。
本件は、被害者や関係者からの詳細な聴取から後遺障害が如何に仕事や収入に影響を与えているのかを具体的に主張立証することで、若干の修正はあったものの、相当な喪失率、喪失期間が認定されました。特に本件では、現実の減収が生じていなかったこともあり、そういった事情を踏まえても、当事務所の主張立証が功を奏した好例であると言えます。
以上