過失逆転事案(100%→50%)。被害者の一方的信号無視を主張した加害者側による免責(過失相殺100%)主張を排斥し,相殺率50%で解決した事例。
加害者側の7級主張を排斥し,自賠責同様被害者に高次脳機能障害5級を認定させた。訴訟前に被害者契約の保険会社弁護士費用特約に基づく弁護士費用(着手金)の払い渋りがあったために適切な苦情を申し立てたケース。
■後遺障害等級:5級2号 確定年:2020年 和解
■さいたま地方裁判所管轄内
被害者データ
23歳
・男性
(大学院生)
男性 受傷時23歳 大学院生
原告が二輪車で交差点を直進中,対向車線から右折してきた被告自転車と衝突した。
高次脳機能障害5級2号
認められた主な損害費目
治療費等 |
約170万円 |
---|---|
休業損害 |
約1,600万円 |
逸失利益 |
約7,630万円 |
傷害慰謝料 |
約350万円 |
後遺障害慰謝料 |
約1,400万円 |
その他 |
約130万円 |
損害額 |
約1億1,280万円 |
過失50%控除後 |
約5,640万円 |
自賠責保険金控除 |
-1,694万円 |
*1調整金 |
約3,050万円 |
*2最終金額 |
約7,000万円 |
*1調整金とは,弁護士費用及び遅延損害金相当。
*2自賠責保険金1694万円を加えた総獲得額は約8690万円である。
詳細
加害者の主張
①本件事故は原告の信号無視により発生したものであるから,100%原告の過失である。
②原告は大学院を卒業後に就労し,約200万円の年収を得ているから,せいぜい高次脳機能障害7級相当である。
原告の反論
①被告が主張するところの,原告による信号無視の事実は,客観的証拠がなく,被告自身による証言も内容に誤りが判明するなど,証拠不十分と言わざるを得ず,到底認められない。
②原告は大学院卒業後就労したとは言っても,実態は障害者雇用により事務補助職に就いたに過ぎず,単純で定型的な作業しかできていない。したがって,原告の高次脳機能障害はまさしく5級(単純繰り返し作業しかできない)である。
・最終的にこれら2点について原告の主張に沿った内容での和解が成立。過失相殺率は50%とされた。
【当事務所のコメント/ポイント】
①訴訟について
加害者側が被害者の信号無視による100%過失を主張し,一切の賠償金の支払いを拒否し続けたために訴訟を提起した事案である。加害者自身の供述を根拠に被害者の信号無視をあくまで主張する相手側に対し,被害者の信号無視を裏付ける客観的証拠は全くなく,また加害者自身の供述にも誤りがあったり詳細に関する記憶がきわめて曖昧であったりする点を指摘する等,我々において適切な反論を加えた結果,相手側の主張を排斥し,過失相殺率50%で解決することができた。
また,被害者の事故後の就労を理由に高次脳機能障害を7級と主張する相手側に対し,被害者の就労は障害者雇用によるものであって,業務内容も単純で定型的な作業しかできていない事実を適切に調査の上主張した結果,裁判所は相手側の7級主張を退け,自賠責同様高次脳機能障害5級と認定させることができた。
②被害者加入保険会社の弁護士費用特約に基づく弁護士費用(着手金)の払い渋りについて
本件では被害者が加入している自動車保険に弁護士費用特約が付保されていたため,これに基づく弁護士費用(着手金)を被害者が自身の保険会社に請求したところ,当該被害者側の保険会社までが加害者側の主張に同調して着手金の支払いを拒絶してきた。
この点に関する抗議も我々において(被害者契約の保険会社に対し)適切に実施した結果,被害者側保険会社の代理店も我々の意見に同意し,最終的には同保険会社上層部の判断に基づいて,被害者は適切な着手金の支払いを受けることができた。
たとえ被害者側が契約・加入している自動車保険であっても,時としてこのように不当な取扱いを行ってくる可能性は否定できない。本件では我々の適切な対応が功を奏したところである。