高次脳機能障害1級児童について請求した介護費全額を認容し1億6000万円以上の損害認定を行った和解事例
・症状固定前の付添い費として日額8000円を認めた和解。
・将来介護費について公的給付額を既給付・将来にわたり控除を行わず施設入所費用日額1万円を全額認容した和解。
・認容された損害元本額の約50%に相当する3000万円を超える高額な調整金加算が認められた和解。
・訴外交渉時の相手方保険会社の提示額が約4000万円だったのに対して訴訟によりその倍額以上の賠償金を獲得した事案。
■後遺障害等級:1級1号 確定年:2019年 和解
■横浜地方裁判所管内
被害者データ
11歳
・女児
(児童)
事故時6歳 固定時11歳 女性・児童
信号機のある交差点を横断歩行中に被害者に直進進行してきた加害車両が衝突したもの
高次脳機能障害 1級1号
詳細
被告主張
①症状固定前の家族による付添費に関して、入院期間中は完全看護体制なので、家族らの介護・看護は医療上必要ではないので賠償対象にはならない等として争った。
②症状固定後の介護費(施設入所費用)に関して、障害者総合支援法の給付があり、ほとんど自己負担をしていないのであるから、自己負担額を基準に賠償がなされるべきであり、給付前の金額(月30万円程度)を前提にすべきではないと主張。
裁判所の判断
①症状固定前の付添費に関しては、被害者が事故当時6歳と幼かったことを踏まえれば両親による付添は、看護体制がどうであっても必要性が肯定されるべきである上、被害者の障害内容が重篤な脳外傷であることを踏まえるべきであること、実際の入院カルテ上でも、相当綿密な家族看護が行われていたことが明らかであることを主張立証した。その結果、裁判所和解案では、入院中~症状固定時期までの家族付添費に関して日額8000円を認定した。
②総合支援法の給付に関して、将来給付に関して自己負担の限度やそれを基礎に若干加算した程度の日額算定とすべきではないことについて、裁判例等も踏まえて詳細な議論を行った。その結果、当方の請求する日額1万円全額を裁判所は認容する和解案を提示した。
当事務所のコメント
①一般的に、入院期間中の付添い費に関しては医療上の必要性がある場合に、日額5000~6500円程度(事案により前後します)が認められるところです。しかし、本件では、幼い被害者に関して、その障害内容から相当長時間にわたり付添いを行う必要性が生じている実態があり、ご両親は入院期間中にかなりの介護負担をされていました。
こうした事実関係を医療記録に基づいて詳細に説明を行った結果、一般的な水準以上の日額8000円の付添費が認定されました。
②将来付添費に関して、将来給付については確実に制度が現在の内容で存続するのか、給付が確実に行われるのかが全く未知数であり、現在の裁判実務では、基本的に、給付が成されるはずとして「控除」をすることは認めないという例が多く存在します。
この点は、当事務所も障害者総合支援法制定以前より賠償実務の最前線で主張を行ってきた分野であり、多くの事案で、加害者側からの自己負担の限度(あるいはそれに近い日額)が相当だとする主張を打ち破ってきた実績があります。
本件でも、施設費用月額約30万円(自己負担は、その一部)を基礎に、日額1万円とした当方の主張が全面採用されました。
③本件は、児童が赤信号横断した可能性もある案件でした。
当方としては、児童が赤信号で横断したことを確実に認定できるだけの客観性のある証拠があるとは考えてはいませんが、どうしてもその点を踏まえて、相応の過失相殺が行われる可能性は考慮せざるを得ない側面がありました。
そのため、過失相殺前の損害総額に関して、如何にこちらの主張を認めさせるのかという点が大きなポイントでもありました。
本件では、請求していた損害合計約1億7900万円に対して、認容額約1億6500万円とほとんどの重要な損害項目について、当方主張が認められました。この点があったからこそ、過失相殺を受けても、上記賠償額に繋げられたものと考えています。
どうしても不利な認定を受けてしまい兼ねないとの予想がなされる事件はありますが、その場合でも、被害者の今後の生活資金となっていく交通事故賠償専門事務所として、最善・最良を目指して、あらゆる事案について尽力をしております。
④また、本件では、認容された賠償元本額の約50%にも相当する約3160万円もの調整金を獲得しています。
調整金とは、和解において、遅延損害金(賠償完了までの間に生じる利息のようなものです)や弁護士費用相当損害金を加味して、裁判所が加算する賠償金です。
本件では、高額な調整金を獲得できたことで、相当の過失相殺を受けつつも、9000万円以上の賠償金を獲得することができました。