次脳機能障害2級の64歳(症状固定時)被害者の将来介護費用につき,在宅介護移行後は2級として十分な水準の将来介護費用(妻67歳までは職業介護併用を前提に日額1万3510円,それ以降は全面職業介護を前提に増額して日額1万5000円。)計約5900万円を認めさせた結果,高額な総獲得額約1億4580万円を獲得した例。
過失相殺は加害者側の15%主張を排斥し,5%と認定させた。
■後遺障害等級:2級1号 確定年:2018年 和解
■大阪地方裁判所管轄内
被害者データ
63歳
・男性
(会社員)
男性 受傷時63歳 会社員
原告が交差点を歩行横断中,右折してきた被告自動車に衝突された。
高次脳機能障害2級1号
認められた主な損害費目
治療費 |
約3,000万円 |
---|---|
付添看護料 |
約210万円 |
休業損害 |
約660万円 |
逸失利益 |
約3,150万円 |
将来介護費用 |
約5,900万円 |
住宅新築費用の一部 |
約200万円 |
将来介護機器等費用 |
約260万円 |
傷害慰謝料 |
約320万円 |
後遺障害慰謝料 |
約2,400万円 |
成年後見費用 |
約620万円 |
その他 |
約70万円 |
損害額 |
約1億6,790万円 |
過失5%控除 |
-約840万円 |
既払い保険金控除(任意) |
-約3,750万円 |
自賠責保険金控除 |
-3,000万円 |
近親者慰謝料 |
約500万円 |
*1調整金 |
約1,880万円 |
*2最終金額 |
約1億1,580万円 |
*1調整金とは,弁護士費用,遅延損害金相当
*2自賠責保険金3000万円を加えた総獲得額は約1億4580万円である。
詳細
加害者の主張
① 原告は高次脳機能障害2級であり,認定基準上常時介護が必要とされる1級ではないから,その介護に当たり職業介護人は必要ではなく,将来介護費用は日額8000円で足りる。
② 本件事故態様に加え,事故の発生時間帯が夜間であり車両の運転者から歩行者の視認が困難である点も被告有利に考慮し,15%の過失相殺をすべきである。
裁判所の判断
① 高次脳機能障害2級の原告には,24時間の身体的介護とまでは言わないが,看視・介助そのものは常時必要であり,介護負担は重いから,職業介護も利用する必要がある。したがって将来介護費用は,妻が67歳になるまでは家族介護と職業介護の併用を前提に日額1万3510円,妻67歳以降は全面職業介護を前提に日額1万5000円として算定する。
② 被告は事故当時夜間でありながら前照灯を点灯していなかったのだから,夜間発生事故であったことを被告有利に考慮することは許されない。さらに被告は右折に当たり通常必要な徐行を怠っていたのだから,過失相殺率は5%に留まる。
【当事務所のコメント/ポイント】
交通事故で高次脳機能障害2級を負った被害者について,保険会社側は「2級被害者に必要な介護は随時介護だから,家族介護だけで足りる」と主張し争いとなった事案である。実際の2級被害者に必要な「随時介護」とは「身体的介助自体は常時でない」ということであって,その前提としての看視(見守り)は現実的に常時必要となるケースが多い。そこで本件でも我々において,被害者のあらゆる生活動作について必要な介護の内容とその負担の大きさについて丁寧に主張した結果,裁判所は職業介護利用の必要性を認めた。その上で将来介護費用については,妻67歳まで日額1万3510円(職業介護を併用),それ以降は日額1万5000円(全面職業介護)という,高次脳2級として十分な基準の将来介護費用計約5900万円を勝ち取った。
また,適正な過失相殺割合についても,被告側が夜間にも拘わらず前照灯を点灯していなかった事実や,右折に当たり適切な徐行をしなかった事実を適切に引用して反論した結果,15%の過失相殺を主張する保険会社側主張を排斥して相殺率5%と認定させた。
この結果,最終的な総獲得額は2級64歳(固定時)被害者として高額な約1億4580万円に達した。