示談においても高次脳1級70代後半高齢の男性について自賠責3,700万円とは別に9,000万円超の賠償金を獲得した示談例
訴外解決である示談ではあるが、訴訟提起も前提に交渉を行った結果、訴訟水準(示談水準としては相当高額)な、自賠と併せて総額約1億4,000万円の賠償を実現した事例
介護居室として賃貸している部屋の家賃に関して、従来の自宅を賃貸したと想定した場合の想定賃料との差額分を損害として算定するという解決方法による示談例
■後遺障害等級:1級 確定年:2018年 示談
■
被害者データ
75歳
・男性
事故時75歳 固定時78歳 男性
路外進出した加害車両が横断中の被害自転車に衝突したもの
高次脳1級
認められた主な損害費目
治療期間中付添看護・介護費 |
約800万円 |
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将来介護料 |
約4,500万円 |
介護福祉機器貸与費 |
約500万円 |
住宅費用(賃貸) |
約800万円 |
傷害慰謝料 |
約350万円 |
後遺障害慰謝料 |
約3,000万円 |
その他 |
約1,550万円 |
損害合計 |
約1億1,500万円 |
任意保険 |
-約1,200万円 |
自賠責(※2) |
-約3,700万円 |
調整金(※1) |
約2,650万円 |
総額 |
約9,250万円 |
※1遅延損害金(3年以上の経過)、弁護士費用等を含む
※2受任前に取得済みであった3,700万円の自賠責保険金とは別途9,000万円を超える賠償金を示談により獲得した。被害者が最終的に得られた賠償総額は、これにより自賠責と併せて、約1億4,000万円となった。
詳細
加害者側の主張
・将来介護料について日額6,700円程度である。
・介護用に賃貸した住宅費用についても支払わないと主張
・当初提案では自賠を除く賠償提示額は2,000万円以下であった。
交渉経過
・数年間にわたる長女を中心とした介護体制継続の結果、長女の心身で疾患が生じてしまっており、負担軽減のためにしっかりとした職業介護体制へ移行していることを改めて各種資料を補充して、相手弁護士へと説明を行った。
・住宅についても、元来の自宅が遠方にあり、家族介護が不可能であったことから、新しく部屋を借りる他ないという事情があることを示し、その上で、示談交渉のための一つの損害算定の方式として、現在の介護居室賃料と、現状のままの自宅を貸したと想定した場合の想定賃料額(見積りなどを近隣業者に依頼)の差額を、損害とするという解決案を提案した。
・その結果、いずれについても、当初提示水準から、訴訟水準に近い金額まで提案が引き上げられ、最終的には、自賠責約3,700万円に加えて、高齢の独居男性としては、十分な9,000万円超の示談(総額約1億4,000万円)が成立した。
当事務所のコメント
(1)まず、大前提として当事務所の方針は、訴訟による解決を第一に考えております。
和解においても、遅延損害金や、弁護士費用の加算・考慮がされることはもちろんのこと、現在の、示談(保険会社)水準の賠償基準では、介護料や、本件のような特別な費用加算について、十分な賠償実務の最新のスタンダードが反映されておらず、全体的に低めの解決となってしまう例が多いためです。
その上で、被害者ご本人やご家族のご要望は優先順位は高く考えております。金銭的余力の問題や、家族の介護疲労度が高いという問題がある場合には、早期解決の要請も強くなるところですから、このような場合には、示談交渉が解決方法としても適切と考えます。
とはいえ、早期解決の要請を前提にしつつも、あまりにも訴訟水準からかけ離れた廉価な示談を締結してしまうことは、多くの訴訟案件を解決してきた当事務所の見地からしても、被害者とそのご家族にとって、適正な賠償を実現できたとは到底言い難いものとなってしまいます。
そこで、当事務所では、示談交渉案件についても、基本的な考え方として、最終的には、訴訟へ移行することを前提としつつ、訴訟水準に相当する、可能な限り、高額な賠償を実現すべく、交渉に取り組んでいます。
(2)今回のケースでは、当初の提案では、特に介護料が、家族介護分程度しか加算されておらず、1級高次脳機能障害の介護料としては、全く不十分な内容でした。加えて、介護居室として借りたことが明らかな賃料についても、賠償を否定しており、全体的に訴訟水準を大きく下回る内容でした。
そこで、当方からは、介護の現状を示す資料を十分に取り付けした上で、訴訟における主張書面と同程度の充実した損害額算定の根拠と、法的な理由付けを徹底して行いました。その結果、相手方からも増額への理解を得られ、相当な賠償が実現しました。
(3)家賃に関しては、当初より相手方が賠償対象外との主張であったため、交渉上では、一定の工夫を要しました。
訴訟であれば、現実には自宅は、事故時のまま放置状態になっている上、新たに借りた部屋は、完全に介護するための用途である以上、経済的な利得は生じていませんから、賃料全額を賠償対象とすべき、との考え方も有り得たところだと考えています。
ただ、この点は、円滑・早期な解決を図るために、仮に自宅をそのまま賃貸した場合の想定賃料については、差し引くこととして、合理的な範囲内での譲歩案を提示したことで、約800万円の将来賃料を獲得することができました。
(4)このように、早期解決の要請がある中でも、数多くの訴訟解決を図ってきた経験や、交渉案件も同じように多くの解決をしてきた実績に照らして、丁寧な増額交渉を相手方と重ね、何度も熟慮を相手方にも求めていくことで、示談(話し合い・相互譲歩を前提とする)という解決方法によっても、被害者の実態に照らして、適正な賠償を実現できるように、尽力しております。本件は、こうした当事務所の知見が活かされた好例であると言えます。