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高次脳機能障害

高次脳3級を争う相手側の主張を退け自賠責認定通りの等級を認めさせた上,3級として高額な総獲得額約2億3090万円を勝ち取った例

(1)一審(地方裁判所)における詳細 加害者の主張 ①原告は中学校進学の際,普通...

■高次脳機能障害(判例134)
■後遺障害等級:3級3号 確定年:2013年 判決
■髙松高等裁判所管轄内

被害者データ 10歳 ・男性 (小学生)
男性 受傷時10歳 小学生
原告が青信号に従い自転車で交差点自転車横断帯上を横断中,赤信号無視で交差点に進入してきた被告トラックに衝突された。
脳外傷による高次脳機能障害3級3号

認められた主な損害費目

付添介護費用

約580万円

付添時住宅賃料

約20万円

逸失利益

約7,840万円

将来介護費用

約4,840万円

傷害慰謝料

約360万円

後遺障害慰謝料

約2,000万円

その他

約70万円

損害額

約1億5,710万円

既払い保険金控除(任意)

-約500万円

自賠責保険金控除

-2,219万円

近親者慰謝料

約400万円

弁護士費用

約1,540万円

遅延損害金

約5,940万円

最終金額

約2億0,870万円

*自賠責保険金2219万円を加えた総獲得額は約2億3090万円である。

詳細

(1)一審(地方裁判所)における詳細

加害者の主張

①原告は中学校進学の際,普通学級に進学し,複数の科目で通常の授業を受けている上,問題行動はあっても集団生活にもある程度適応しているから,高次脳3級を認定した自賠責の判断は誤りであり,実際の症状はもっと軽いものである。
②原告は病院でのリハビリに真剣に取り組むことができており,日常生活動作は自立しているのだから,将来の付添介護は不要である。

地方裁判所の判断

①原告は学校でも問題行動を起こすなど人間関係のトラブルから共同生活に適応できず,中学校2年次以降は支援学級に移ることを余儀なくされ,普通高校ではなく支援学校に進学せざるを得なかった程であるから,原告の高次脳機能障害は自賠責保険の認定通り3級相当である。
②病院でのリハビリは環境が整った状況で作業療法士が原告を集中させるよう努力しながら実施しているのであるから,リハビリに取り組めているからと言って介護の必要がないとは言えない。原告は高次脳機能障害のため,周囲の家族やクラスメイトからの刺激があるとすぐに気が散ってしまい,日常生活を自立して営むことのできない状態であるのだから,家族の見守り・声掛けといった介護が将来的に必要である。
→加害者側は裁判所の判断を不服として控訴。

(2)控訴審(髙松高等裁判所)における詳細

加害者の主張

一審と同様の主張を繰り返した上で、さらに「障害者の就労に対しては公的な支援制度等が充実しており、原告もこうした制度を利用して就労できる可能性があるから、原告の高次脳機能障害は5級以下である」等の新たな主張を追加した。

高等裁判所の判断

地方裁判所の判断を全て追認する判決が出された。
①原告は裁判が控訴審に進んでからも支援学校で周囲とトラブルを起こすなどしており、高次脳機能障害の症状は相当重いことが明らかであるから、一審の判断は妥当である。
②仮に障害者に対する福祉的支援を受けながら自己実現のために就労することが今後あったとしても、そのことを理由に「(就労して)収入を生み出す労働能力がある」と言うことはできない。

当事務所のコメント/ポイント

交通事故による高次脳機能障害について,自賠責保険で認定された等級を加害者側弁護士が争ってくる事態はしばしば見られるところである。この事例では,自賠責保険による3級の認定に対し,相手側から「実際の症状はもっと軽く,介護は不要である」という反論がなされた。そこで,我々において主張を重ね,被害者の支援学校における様子なども丁寧に引用し,被害者には見守りや声掛けといった介護が将来にわたり必要であることを立証した。その結果,裁判所も自賠責保険の認定が適正であることを認め,相手側の主張を全面的に排斥した。
加えて慰謝料についても,加害者が事故後も「被害者が赤信号を無視した」という虚偽の説明を続けた点を強く主張し,通常の基準よりも慰謝料を増額させた。
さらに事故から判決まで7年半が経過し,約6000万円近くもの遅延損害金も認められたことから,3級にも拘わらず2億円を超える高額な賠償額を獲得することができた。

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