各種介護サービスが将来は低額利用できる?
損保の根拠なき払い渋り主張に「NO!」の判決
■後遺障害等級:1級 確定年:2005年
裁判所認定額 約1億7700万円
■福岡地裁管内
被害者データ
69歳
・女性
■ 信号機のある交差点で、青信号で横断歩道を歩行していた被害者に、青信号で右折してきた普通貨物自動車が衝突
■ 脳挫傷による高次脳機能障害1級
(福岡地裁管内)
認められた主な損害費目
将来介護料 | 約1億1,200万円 |
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逸失利益 | 約2,200万円 |
後遺障害慰謝料 | 約800万円 |
近親者慰謝料 | 約800万円 |
その他 | 約700万円 |
計 | 約1億7700万円 |
(過失相殺なし)
詳細
青信号の横断歩道を横断していた69歳の女性が、交差点を青信号で右折してきた普通貨物車にはねられ、開放性頭蓋骨骨折、急性硬膜下血腫等の重傷を負い、脳挫傷による高次脳機能障害1級に認定されたケースです。被害者の介護には、主に高齢の夫と、自営業を営む息子があたっていました。
本件で特に注目すべきは、「将来介護料」についての認定です。 被告(損保会社)は、将来介護料の認定を少しでも低く押さえるために、「今後、介護保険の給付割合や保険適用の範囲が変更されれば、介護ビジネスにもさまざまな影響がある。廉価で利用できる介護施設などが充実すればそちらを選択することも考えられる」などと主張してきました。しかし裁判所は、「本人の生存期間である今後十数年の間に、各種介護サービスがより廉価で利用できるようになる具体的な見込みはない」と判断。現時点で支出する必要のあると認められた1億1000万円超の将来介護料を認定したのです。
実は、本件のような「介護費用の低額化の予測」は、同種の訴訟でよく見られますので十分に気をつけてください。被告(損保会社)は、介護費用が安くなる「可能性」を述べるだけなのですが、裁判官の多くは客観的な「立証」がなされていないにもかかわらず、安易に被告の主張を採用し、極めて低額の介護費用しか認定しないのです。そんな状況の中、この判例は、被害者と介護者の過酷な実態を汲み取って現実に必要な介護費用を算定しくれた、評価に値する判決といえるでしょう。 (福岡地裁管内)
認められた介護料の内訳
原告平均余命約18年間につき
平日:(職業25,392円+家族4000円)×365×6/7
休日:家族介護 8,000円×365×1/7
合計 1億1200万円を認める
※認定額増加のポイント
・ 介護料は、上記表の通り、約1億1,200万円が認められた。
・ 逸失利益は、女子労働者65歳以上平均賃金を基礎収入とし、原告平均余命19年間の半分9年間として、約2,200万円が認められた。