高位脊髄損傷の男性(事故時48歳)につき家屋改造費や将来介護料等総額約3億円が認められた事例
控訴審で一審判決の計算方法の誤りを訂正し、賠償額を約3600万円増額する和解案を裁判所が提示
■後遺障害等級:1級 確定年:2013年
■札幌高等裁判所管内(和解)
被害者データ
・男性
交差点において、直進の被害車両と右折の加害車両が衝突した事故で、被害者は頸髄損傷(C3レベル)となり、四肢・体幹の麻痺が残った。1級
(北海道・札幌高裁管内)
認められた主な損害費目
将来介護料 | 約9,618万円 |
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妻67歳まで16,000円、その後20,000円 | |
付添費用 | 約540万円 |
休業損害 | 約770万円 |
逸失利益 | 約5,410万円 |
住宅改造費 | 約2,160万円 |
(原告主張 約2,600万円) | |
介護用設備等 | 約710万円 |
介護用設備買換等 | 約1,040万円 |
将来介護雑費 | 約940万円 |
慰謝料 | 約3,160万円 |
近親者慰謝料 | 約450万円 |
その他 | 約120万円 |
損害額 | 約2億4,920万円 |
過失20%控除 約1億9,940万円 ※人身障害保険があるため、実質無関係 |
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人身障害保険 | 約6,000万円 |
任意保険 | 約3,730万円 |
労災保険 | 約1,090万円 |
自賠責保険 | 約4,000万円 |
既払金合計 | 約1億4,820万円 |
遅延損害金 | 約4,010万円 |
弁護士費用 | 約1,550万円 |
和解額 | 約1億5,650万円 |
詳細
被害者の男性は、首から下が全く動かないという重い後遺障害を負い、日常生活のすべてについて、奥様の介護が必要な状態となりました。
当ネットワークに相談に来られた時点では、退院後の在宅介護のための自宅の大幅な改築を実施しなければならない状況でした。この時点では、まだ治療・リハビリの途中であり、自賠責保険金をすぐに受領できる状態ではなかったため、当ネットワークの弁護士が、ただちに加害者側保険会社と交渉して、3000万円の内払金を支払わせ、この資金で家屋改造を行い、また介護用設備や介護用車両を購入することができました。その後、自賠責保険金4000万円を受領して提訴しました。
一審判決は人身傷害保険の充当について誤った計算方法を採用したため、1億2000万円の認容判決となりました。原告・被告双方が控訴し、高等裁判所において1億5650万円を支払う内容の和解が成立しました(自賠責保険や人身傷害保険等の受領額を含めると総合計は3億円を超えます)。 (北海道・札幌高裁管内)
■増額のポイント
寒さが厳しい北海道という地域性と、体温調節が困難な頸髄損傷患者の生活・介護の実態を丁寧に立証した結果、バリアフリー化工事、断熱効果を高めるため外壁や床の全面的な改築、暖房等の空調設備工事等の大半が認められ、将来介護費用も脊髄損傷事案としては高水準(妻が67歳までは日額16,000円、その後は日額20,000円)の和解となりました。
また、1審の審理中に、人身傷害保険について、被害者にも過失がある場合に被害者に有利な充当方法を認める最高裁判決が出たため(最判平成24年2月20日 民集66巻2号742頁。なお、この最高裁判決も当ネットワークの弁護士が担当した事件です。)、1審判決の直前に人身傷害保険金6000万円を受領し、同日までの確定遅延損害金も請求しました(同最高裁判決が請求できることを明示しています。)。一審判決は、上記最高裁判決を指摘しているにもかかわらず、最高裁判決に反する被害者に不利な計算方法をとったため、控訴しました。
控訴審では、一審判決の計算方法の誤りを訂正し、賠償額を約3600万円増額する和解案を裁判所が提示し、和解成立となりました。