刑事事件で無罪となったにも関わらず,民事裁判で加害者に80%の過失があることを認定させた事例。
事故時41歳,過失相殺20%の死亡事故において総額約9800万円を獲得した。
■確定年:2018年 和解
■東京地方裁判所管内
被害者データ
41歳
・男性
(会社員)
男性 受傷時41歳 会社員
被害者が二輪車で道路走行中,路外から突然左折してきた加害自動車に衝突された。
死亡事故
認められた主な損害費目
逸失利益 |
約7,940万円 |
---|---|
葬儀費用 |
150万円 |
慰謝料 |
約2,800万円 |
近親者慰謝料 |
約100万円 |
その他 |
約10万円 |
損害額 |
約1億1,000万円 |
過失20%控除後 |
約8,800万円 |
自賠責保険金控除 |
-約3,000万円 |
*1調整金 |
約1,000万円 |
*2最終金額 |
約6,800万円 |
*1調整金とは,弁護士費用,遅延損害金相当。
*2自賠責保険金約3000万円を加えた総受取額は約9800万円である。
詳細
加害者の主張
①そもそも被告は,刑事裁判で無罪となっている。
②仮に被告の過失が0%ではないにしても,被害車両は制限速度を大幅に超過して運転していたと思われるから,70%の過失相殺をすべきである。
裁判所の判断
①被告に対する刑事裁判での無罪判決は,当該刑事裁判を担当した検察官の設定した訴因についてのみ犯罪の証明がないと判断されたものであって,刑事裁判とシステムが異なる民事裁判に必ずしも影響するものではない。したがって民事裁判で被告に対し大きな過失を認定することは刑事裁判結果と矛盾しない。
②①を前提として,確かに被害者にも一定の速度超過が認められるから,一定の過失相殺はすべきである。しかし,速度超過の程度は被告の主張より小さいと思われる一方,被告車両は路外から左折して現場道路に出てくるために道路を塞ぐ時間が長くなったのであるから,被告の方により高度の注意義務があった。したがって,被告の過失の方が大きいことは明らかであるから,過失相殺率は20%とすべきである(=被告の過失は80%)。
【当事務所のコメント/ポイント】
加害者が刑事裁判で無罪判決を受けたという事案である。このように加害者が無罪となった場合,常に被害者が100%悪かったのだと感じられるかも知れない。
しかし我々は,無罪判決の中身を詳細に分析した結果,実際には本件事故が加害者の大きな過失によるものであるとの確信に至った(実際のところ,本件が刑事裁判で無罪となった背景には,検察官による立証活動に大きな問題があったと思われる。)。そこで民事裁判として本訴を提起し,詳細な主張を行った結果,民事裁判所も加害者に80%の過失がある(これに対し被害者の過失は20%)と認め,総取得額約9800万円を獲得することができた。
刑事裁判で加害者が無罪となっても,納得がいかなければ,交通事故を専門とする弁護士に相談することが重要である。本件はご遺族から我々にご相談いただいた結果,適切な結果を導くことができたものである。