60代女性死亡事案で第一審で約5,000万円の判決に対し、控訴した結果、大幅な増額が認められ、約6,500万円の賠償金を認定し、遅延損害金等を含めて約8,000万円を獲得した裁判例
受傷後死亡までに約2年半の期間があることから死亡と事故との因果関係が争われたがこれが認められた事例
■確定年:2016年判決
■東京高等裁判所管内
被害者データ
62歳
・女性
(兼業主婦)
死亡時62歳・女性(兼業主婦)
交差点を左折した加害トラックが左折先にある横断歩道を青色歩行者用信号に従って横断歩行していた被害者に衝突したもの
死亡
認められた主な損害費目
○第一審判決
休業損害 |
約550万円 |
---|---|
逸失利益(就労・年金) |
約1,920万円 |
傷害慰謝料 |
約400万円 |
後遺障害慰謝料 |
約2,000万円 |
その他 |
約740万円 |
損害総額 |
約5,460万円 |
損害填補(労災・任意) |
-約1,080万円 |
近親者慰謝料 |
約200万円 |
弁護士費用 |
約460万円 |
損害元本 |
約5,040万円 |
○控訴審判決
休業損害 |
約650万円 |
---|---|
逸失利益(就労・年金) |
約2,600万円 |
傷害慰謝料 |
約500万円 |
後遺障害慰謝料 |
約2,250万円 |
葬儀費用 |
約150万円 |
その他 |
約760万円 |
損害総額 |
約6,760万円 |
損害填補(労災・任意) |
-約1,080万円 |
近親者慰謝料 |
約250万円 |
弁護士費用 |
約590万円 |
損害元本 |
約6,520万円 |
遅延損害金(※1) |
約1,500万円 |
最終金額 |
約8,020万円 |
※1 年率5%が認められる。なお、第一審では、同様に事故日から年5%での遅延損害金は認められているが、控訴した関係上対象期間が異なるので記載を省略している。
詳細
加害者の主張
被害者は事故当時成人済みの家族と同居をしているだけであり、他人のための労働の提供といえるほどの家事はしていないとして被害者の実収入額以上の基礎収入は認められないと主張
裁判所の判断
当方では、被害者が同居する家族のために家事全般を担っていたことを家族の陳述書なども提出した上で具体的に主張し、主婦の収入額の基準である賃金センサス女性学歴計全年齢平均賃金を採用すべきであることを主張立証した。
これに対して、第1審は、特段の理由もなく年額240万円を基礎収入とすると認定した。また慰謝料額についても必ずしも重度の傷害を負われて入院生活を余儀なくされた上に亡くなったご本人や家族の無念が十分に評価されたとは言えなかった。
そこで、第1審判決に対して、賠償金の増額を求めて控訴を行ったところ、控訴審裁判所は、基礎収入については女性全年齢平均の8割を認め、基礎収入額としては約500万円の増額がみとめられた。また慰謝料についても第1審よりも全体的に増額し、損害元本として、約1,500万円増額する内容の判決がなされた。これに遅延損害金が付加されて、最終総額としては8,000万円を超える賠償金を獲得した。
当事務所のコメント
主婦の場合、家事労働は実収入自体は得ていないことから休業損害や逸失利益を計算するうえでは、統計に基づいた平均賃金を採用するのが一般的です。その上で、被害者の年齢や家族構成に応じて金額を調整することになります。
本件のように成人済みの家族との二人暮らしというような場合、子供やほかの家族がいる家庭と比較して一見して家事の内容、労働の程度を低く評価しようとする傾向があり、加害者側もこの点を指摘して争ってくることが少なくありません。特に本件の第一審裁判所の判断は、平均賃金をベースにこれを特段の事情の有無・内容により調整するというような認定をせずに、理由もなく低額な基礎収入を認定しており、全体的にみて問題が多い判決でした。そこで、当事務所では、控訴を行い、再度丁寧な立証を行った結果、基礎収入の面でも、慰謝料額の面でも大幅な増額が認められました。
控訴審で第1審の判断を覆すのは難しい面も多く、本件は、これまで多くの交通事故被害者とそのご家族の賠償を支援してきた当事務所の豊富な経験が活かされた好例と言えます。